續】渦巻くカエル

蕎麦とお酒と蛙が好きです no war,no nukes love and peace

昨日の夜のことだった。私の一人暮らしのマンションに、大学生の弟が突然やってくる。

実家でも弟が私の部屋に入ったことなんかなかったので、私のベッドとか服とか置いてある空間に弟がいるって光景が、なんか不思議。すると弟も言う。

「この日常、ぶち壊すって感じで申し訳ないんだけどさ、」

何この子。酔っぱらってんの?

「大きな災いがやってくる。」

あんた何言ってんの?それネットとかのデマの話じゃなくて?
信じんのあんた、そこまで馬鹿じゃなかったよね。

「唐突でごめんな。でもマジで、この街は明日全部壊れるよ。」

「災厄ってさ、本当は不意に襲ってくるんじゃなくて、
実際には予兆だって警告だってあるんだ。」

弟にしか見えない男の子と二人きりで向かい合っていて、
でも絶対こんなこと言わないよな、と思ってなんか怖くなる。
「何なのあんた。・・誰なの?」

「僕は警告だよ。」

怖い。
不思議なことが起こっている。
でもそれを覚えておくべきだったのだ。
不思議なこと、突飛なことだって、起こるのだ。
弟が言う。

「いつも通りの日常を過ごしている時に、
予兆とか警告の唐突さにどう向き合えるかが重要なんだ。」

「ちょっと…」私の背中がぞくぞくする。この子普通じゃないよ。
絶対おかしい。
私の足が震え始めると、弟が少し笑う。

「じゃあ姉ちゃんに任したからな。」
「意地悪するみたいで申し訳ないけど、
もちろんその反対だよ。」

そしてそのまますうっと薄くなり、消える。

私は昨日の夜のうちに、ちゃんと伝えるべきだったのだ。
もっと大きな声で叫ぶべきだったのだ。
今住んでる街がなくなるとか、いつもの日常がなくなるとか、
普通に生きててどうやって言うの?
でももうそんな警告、届かない。伝わらない。
災厄そのものが今目の前で立ち上がる。

「明日が来る前に、この街から逃げ出しなさい」

創造主ばかりが神ではない。
自分の願いや祈りを聞き届け、叶えてくれる存在だけが神というわけでもない。
大きな災厄が人間と似た形で空から降りてきて、私たちには判る。
畏れこそが神の本質なのだ。
だから人間たちは、自分たちに危害を加え、命を奪おうとするものにも手を合わせ、膝を折り、拝み、祈る。

世界には寿命がある。
なのに、僕たちに任せても世界がダラダラと延命するだけなので、
世界は強引にあいつらを召還する。
そのとき僕たちは、全てが終わるべくして終わるんだと知る。
でも僕たちはひたすら生き続けたかったのだ。世界を終わらせたくなかったのだ。

創造の神は七日間でこの世界を創ったらしい。
僕たちだってこの世にいろんなものを作ってきた。
こんなふうに一瞬にしていろいろ壊されてくように見えるけど、
たぶん壊すほうにだって同じくらい時間がかかるに違いない。
炎が世界を壊すのに七日間かかるなら、それだけ逃げるチャンスもある。
逃げろ。生き延びろ。新しい世界を自分で創ればいいんだ。
世界の意思なんて知るものか。神の気持ちなんて構うものか。

「第一の日、人と地上の生き物が消える。」
「第二の日、この世から全ての生き物がいなくなる。」
「第三の日、太陽と月が壊され昼も夜もなくなる。」
「第四の日、地が沈み、全ては水になる。」
「第五の日、水も空も失せる。」
「第六の日、光が消え、すべては闇と混沌に包まれる。」
「第七の日、災いは仕事を終え、安息の喜びの中で静かに泣く。」
「これが、これから始まる火の七日間である。」

終わる世界の中で、私以外の存在に希望を抱きながら、私は生き、
逃げながら待っている。
新世界の訪れの前の、巨大な炎がやってくる

 

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11.3 は

 

やはりゴジラ

 

会いに行こうか